約束の日。

キャバクラで交わした約束のことなどすっかり忘れていたが、彼女からは約束の時間の前にちゃんとメールが来た。

「今日は昼間の仕事が忙しくまだ抜けられてへん。明日でもええやろか?」

ボクは、約束を忘れていて、しかも、待ち合わせ場所とは程遠い場所にいたので、すぐに快諾した。

本当に来る気だったのか。と、嬉しいような、困惑したような気分だった。

翌日「今日は5時で平気?」と彼女からメール。
夕食には、少し早い時間だったので、ボクにはピンときた。

おそらく今日は出勤の日で、出勤時間の前に食事をして同伴をねだる気だ。

「8時はどう?」

とカマをかける。出勤時間には間に合わない。

「今日は出勤でな、その前に少しでも会いたいねん。」

率直に言うのがかわいらしく、あまり営業よろしく話すようならば断わればいいか。と思い、5時に会うことを承諾した。

約1か月が経ち

2010年12月21日 恋愛
最近、ボクを知る人格が復活したようだ。

毎日、メールが来る。
ボクのメールにも、すぐに返信が来る。

でも、今日、
ぱったりメールが来なくなった。

わかっていても、なんだか淋しい。


今度は、どのくらい「他人」になってしまうのだろう。


てか、いつまでこんなこと続けるんだろう。
-前回の続き


それから、「解離性―」、「リスカ」というキーワードでネットを検索した。
たくさんの記事にヒットすることに驚いた。

ボクは無心に記事を読み込んだ。

なかでも、専門医による症状の解説や、実際に患者さんと向き合っている方のブログなどは、とても興味深かった。

ボクにとっては不可思議と思えた彼女の行動が、まるでパズルの欠落したピースが埋まっていくようにとけていった。

おそらく、彼女は「解離性障害」、「解離性同一性障害」の治療を受けていたのだと思う。

そして、それはいまでも彼女の中に存在する。


別れ話をかたくなに拒んだのは「見捨てられ不安」による拒絶行動だったと思う。

熱烈に好意を寄せてきたり、あっさり冷めて連絡がなかったりするのは、
同一性障害(多重人格)によるもので、ボクが好きな人格と、そうでない人格が入れ替わているのだろう。

複数のセフレと交友を続けるのは「性依存」かもしれない。

かりそめでも、愛されてるという実感が欲しく、肌を合わせている間は何らかの充足感を得るのだろう。

無数のリスカ痕は「自傷行為」。

そして「自殺願望」は、未だ彼女の中に大きく潜んでいる。


いま思えば、一緒にいる彼は単なる「束縛男」ではなかったのかもしれない。
彼女を理解していて、ケアをする意味で頻繁に連絡をしていた。
しかし、彼女はいつだって手の及ばない場所にいる。


ボクと彼女が蜜月の関係に戻ることはもうないだろう。
なぜか、ボクたちは「気軽な関係」になることは出来なかった。

それでも、彼女のメールを心待ちにしているボクがいる。
一度味わった甘い果実の味は、なかなか忘れることができない。

-前回の続き

ほとんど会話もないまま、ベッドルームへ入った。

ボクは本能のおもむくまま、彼女の衣服を取り去り、小さな肢体を露わにした。
彼女は抵抗することなく、すべてをボクにゆだねていた。

しばらくすると、彼女が抵抗しないだけでなく、何の反応も示していないことに気がつく。

体を起こして顔をのぞく。
まつげが涙で濡れていた。


「どうしたの?」

「・・・ろして」

「え?」

「殺して・・・」

「私を殺してよ・・・」


言葉を失うボクに、彼女は続ける。


「死にたいのよ、私」

「生きてる意味なんてないの」

「もう、存在していたくない」

「ねぇ、殺してよ」

「ケンゴさんならできるでしょ?」

「消えてしまいたいの・・・」


うつろな目をしながら、うったえかける彼女は、いまはボクの腕の中には存在せず、どこか遠くにいるように感じた。

静寂のなか、彼女の嗚咽が聞こえる。
目尻からあふれる涙が、枕カバーに染みを作った。

思いもよらない事態に当惑する。ボクは深く呼吸をして、できるだけ冷静になるようにつとめた。

しばらくして、ボクは彼女の目を見て言った。


「わかった、殺してあげる」

「1千万円用意できれば、そうする」


驚きの表情をのぞかせる彼女にボクは続ける。


「ボクは殺人犯になって刑務所に入る気はないよ」

「そのために証拠を完全に消して、死体を完璧に処分するには、それなりにお金が要る」

「ボクのリスクとかも含めたらそのくらいが妥当だと思う」


「現実」を見失った相手には「とことん現実的」な話をしてみよう。と咄嗟に思いつき、ボクはこう言っていた。

突飛な要求に、とまどう彼女。


「そんなお金・・・あるわけ・・・」


そして、彼女は火がついたように激昂した。


「じゃあ、もう出て行って!」

「殺してくれないんだったら、ここにいる意味ない」

「出て行ってよ!早く!」


彼女は、枕に顔を伏して泣き崩れた。

ボクは所在なくベッドルームを出て、リビングのソファに座った。

どうしてこんなことになったのだろう。
彼女に出会ってから猫の目にように変化する状況に、ボクの頭は、正直ついていけていない。

まず、この状況をどうすべきか考えるが、答えは出なかった。

ベッドルームから声がするので聞き耳を立てていると、こんな深夜でも「彼」からの電話があったようで、彼女が応じていた。

涙声で応じたのを心配したのか、その後も何度か電話があり、彼女が応じる声が聞こえた。

しかし、しばらくすると何の物音もしなくなった。

衣服を取りにベッドルームへ戻る。彼女はすでに寝息を立てていた。


静かに、彼女の部屋を後にした。
もう空が、少しずつ白みはじめている頃だった。




後日に続き。
-前回の続き


とても不思議な感覚だった。
まるで、彼女にはボクが過ごした時間と同じ時間が存在していないように感じた。

久しぶりに会った彼女は、最後に会った日のそのままだった。

待ち合わせ場所でボクを見つけると、小走りで近寄ってきて、すぐに腕をからめ、身を寄せてきた。
食事をする場所へ移動する間も、人目を忍んで何度もキスをせがまれた。

うっとりとした視線を送る彼女は、はたして、ボクが「もう終わったんだ」と思うほど疎遠にしていた本人とはとても思えなかった。

メールのことを尋ねると、

「メール見た。返信しなくてゴメンね。」
「私、メールあまりしないかも。」

とだけ答えた。

今日も出張だという「彼」からは、あいかわらずひっきりなしに着信があり、携帯のイルミネーションが光る。
確かに、こちらの相手をしていたら、ボクにメールを送る時間はないかも。とも思えた。

あとは、とにかく「会えてうれしい」と言って、以前と同じように、全身をゆだねボクに甘えてきた。

また「気楽な関係でいたい。」ということを繰り返し、ボク以外にも同じような関係の男性が5人いる。と告げ、
携帯のアドレス帳の画面、「その関係」でグループ分けされている部分をボクに見せた。

彼女に少なからず好意を寄せていたボクは、少し複雑だったが、なぜが「彼」への同情を感じ、それほどショックではなかった。

ボクは、もう少し彼女のことを知ろうと、できるだけ質問をした。

いままでの生い立ちのこと。
普段の過ごしかた。
少しだけ、過去の病気のこと。

彼女は臆することなく、すべて丁寧に答えてくれた。
病気に関しては「解離性ナントカ?」と言い、以前も話した閉鎖病棟の話をした。

実は、以前から見とめていた、左腕に残る無数のリスカ痕について水を向けると、

「消えないよね、これ、他の皮膚を移植とかしない限り」

と、他人事のようにサバサバ答えた。

その日は、あまり酔っていなかったが、半ば強引に彼女の部屋に押しかけた。
いままで放置されていたことに対して、少しの腹いせをしたかったのかも知れない。

しかし、この行動が最悪の事態を招いた。




この続きは、また後日。
-前回の続き


まるで失恋をしたような気分だった。

先に別れを告げたのはボクだった。
しかし、強引に撤回させたからには、彼女の思いは強く、
このあとの展開を彼女が積極的に望むものだと思っていた。

しかし、現実はまったく反対だった。

ボクは、別れを告げ、すぐに撤回したバツの悪さもあり、最後に会った日の夜に一度メールした。
そして、ひとりで過ごしていた休日に一度。

それらのメールに、彼女からの返信は一切なかった。

どうしても連絡を取る必要もなかったし、
一緒にいる彼のことを考えると「電話」をすることもない。

最後に会った日までは、ボクのメールに対する返信は必ずあったし、
とりたてて必要のないメールが彼女から送られて来ることもあった。

いままでとあまりに違うテンションの急落ぶりに「なぜ?」「どうして?」という疑問符が頭に浮かぶ。

こうなると、彼女への思いばかりが募っていった。

彼にバレた?なにか事件があったのか?
ボクの一人称のまま、この状況を説明できる答えを探す。

「別れよう」と言った以外に、彼女に愛想をつかされるような決定的な出来事はなかった?

彼女と過ごした時間を振り返る。
しかし、ネガティブな記憶は影をひそめ、「本当に素敵」「何もかもサマになる」といたずらに微笑んで、ボクに寄り添ってくる彼女の姿ばかりが思い返された。

本当に、彼女が恋しくて仕方がなくなっていた。


2週間も経つ頃には、彼女のことはあきらめようと決心していた。
彼女も、彼にひとすじになろうと決意したのかも知れない。

そのころのボクは、ひどく落ち込んでいて、ところ構わずため息をついていて、それを心配してくれる友人もいた。
その友人に、思い切ってこの顛末を話した。言葉にしたことで、思いが少し希釈された気分にもなった。

普通に仕事をし、食事をして、時折り例のチャットで、何人かの女性と話したり。
彼女と知り合う以前の日常を取り戻し、ボクの中で、彼女の存在が急速に小さくなりはじめていた。

彼女からメールが来たのは、そんな頃だった。



この続きは、また後日。
-前回の続き


酔いにまかせて、彼女は少しずつ過去の話をした。

「高校生のころは、ずっと入院をしていた」
「閉鎖病棟に入れられていて、時には手足の自由も奪われていた」

ボクはネットの世界にいることが多く、少し麻痺していたのかもしれない。
ネットの世界にこもっている人たちには、メンタル的な病をうったえる人が少なくない。
だから、こんな彼女の告白も、当時のボクの心にはあまり響かなかった。

いまは、そんな病の影を感じさせないし、もう治ったのだろう。
まるで「昔、虫垂炎だったの」と告白されたくらいのインパクトしかなかった。

それよりも、キスをしたあと、すっかり緊張がほぐれ、ボクに存分に甘えてくる彼女を受け入れることに没頭したかった。

甘い果実をむさぼるように、
人目もはばからず、抱き合い、何度もキスをした。

その夜は、彼女の部屋に泊まった。

彼女が言ったように、出張先の彼からは、幾度となくメールや電話の着信があった。
彼女の居場所を知るためのGPS照会メールもあった。「自宅にいるよ」と余裕しゃくしゃくの彼女。
出張のときに恒例という、TV電話もかかってきた。ボクをバスルームに閉じ込め、応じる。

そんな秘密のひとときを、ボクたちは大いに楽しんでいた。


翌朝、ボクにとっては、すばらしいと思える朝食が準備されていた。
具だくさんのマフィン、よく煮込まれたポトフなど、いろどり豊富だが、深酒した体にはやさしいメニュー。

この女性と居れば、最高の幸せが手に入るのでは。と思った。

しかし、朝の光の中に浮き上がる、彼との生活感いっぱいのリビング・ダイニングを見渡していると、やはりボクがここに割り込むべきではない。という思いが急速に湧きあがり、

「やっぱり、これきりにしよう」

と彼女に告げていた。

彼女は、頑としてその提案を受け入れなかった。

平静さは失わなかったが、彼のことを気にしなくていいこと、真剣に考えずもっと気楽に。と小一時間ほど、ボクを説得した。

もちろん、彼女への気持ちがなくなったわけでもないし、けっして彼女の過去にこだわったわけでもない。まだ甘い時を過ごしたいという気持ちだって少なからず持っていた。

何より、こんなに女性から慕われることが、ボクにとっては本当に久し振りの出来事だったので、ボクは彼女に従うことにした。


ところが、である。

「また連絡するね」と微笑んで別れた彼女と、それからしばらくの間、一切音信不通となった。



この続きは、また後日。
久しぶりにここに戻ってきた。

インパクトのある恋愛をしたときは、いつも。
ここにその模様を綴っている。

これから、最近起こったとても稀有な女性との出会いと、過ごした日々、味わった挫折…について書こうと思う。

あくまで、自分用の備忘録。
同感されたり否定されても構いません。でも、その思いはできれば胸中に秘めておいてください。

また、これはメンタル的な病を持った方への、誹謗や中傷ではけっしてない。ということを、あらかじめ申し上げておきます。



彼女との出会いは、あるサイト、いわゆる出会い系。
チャットでリアルタイムで話をすると、とても盛り上がった。

料理やお菓子作りが得意で、友達を招いて料理の手ほどきをしているという。
都内のおいしいお店の情報。映画の話。絵画展の話。

ひさしぶりにこんなに趣味の合う女性に出会えたと思った。

でも、ボクはネットで出会った女性と「メル友」以上の関係にはあまりならない。
特にそう決めているわけではないが、結果としてそうなる場合が多い。

しかし、今回はある失敗をしてしまった。

パソコンの短文登録で、あるワードにボクの「会社名」と「本名」を登録していた。
これは、仕事のメールを書く場合、文頭のあいさつを簡単に入力するためだ。

彼女とのチャットで、うっかりその変換をしてしまい、そのまま送信してしまった。

「何この名前?」とあわてる彼女。
「さぁ?いまネカフェだから。誰かが登録してたのでは?」と、うそをつく。

「登録って何」…

まずい。と思ったが、どうにかその場は誤魔化した。
ただ、この相手の尻尾はずっと掴んでおかなければ。と思った。もしログを保管されていて、何かに悪用されたら・・・と。

メールアドレスを交換すると、早速、彼女からのメール。

しかも写メ。白いソファに座る、肌の白い端正な顔立ちの女性が写っていた。
「いま撮ったの。(照)」と彼女。

なんてキレイな人だろう。と思うのと同時に、ボクの不安は増大した。

おそらく、この相手は何かの業者。この写真はどっかからの「拾い」だろう。
だって、こんなキレイな人が出会い系でチャット?おかしいよ。

絶対に、この相手と直接コンタクトしなければ。と思った。

「いまから、会えない?」という申し出に、
「ちょうど買い物に行くところだったから、少しなら」とあっさり応じてくれた。

バックれられるのを覚悟で、待ち合わせの場所へ向かう。
途中、彼女から電話番号がメールで通知された。

すぐに電話をすると、女性が応じた。少しほっとする。
でも、女性も使ってなにかを勧誘する組織もあると聞く。
「必ず待ち合わせの場所に行くから、絶対来て。」と念を押した。

しかし、ボクの不安は、まったくの杞憂だった。
よく陽のあたるカフェで、写メとすっかり同じ容姿の女性とカフェオレを飲んでいる。

本当にキレイな女性。23歳だという。
不安が去ると、あとは希望だけが芽生えてくる。高鳴る胸をどうにか押え、平静を装い話をした。

会ってすぐ「私、同棲している婚約者がいます。」と彼女は切り出すと、その後は、彼の話に終始した。
しかし、その内容はすべて彼への不満。とにかく「束縛」するそうだ。

同棲すると同時にシェフの仕事を辞めさせられ、家に閉じ込められた。
仕事へ行っていても20分おきのメール。
どんなに遅くなっても家で食事をするので、必ず用意しなければならない。

本当は海外のレストランで修行したかったが、彼には専業主婦を望まれている。
まだ、彼との結婚の踏ん切りがつかない。だから子供は欲しくない。

と。

仕事もしていないので、退屈しのぎのチャット。不平不満を聞いてくれる相手が欲しかったんだな。と思った。
同時に「チャンスだな」とも思った。こういう心の隙につけ入るのは、非常に簡単だ。

ボクが思っていたよりも、本当に簡単にコトは運んだ。

「今夜、彼は出張で帰って来ない」という連絡が、最初に会った日から少しも経たないうちにあった。その夜は一緒に食事に出かけた。

ボクの提案で「チーズフォンデュ」を食べた。
お互いにワインがまわり、楽しい時間が過ぎる。

彼女が、大きめのブロッコリーをチーズにつけてボクの口に押し込む。
彼女がボクの口についたチーズを指で拭うと、自分でペロリと舐めた。

ボクは大きいポテトを彼女へ。
口元のチーズを指で拭ってあげる。
彼女はじっとボクを見ながら、その指に舌を絡ませて口に含む。

ボクたちは自然にキスをした。


いま思えば、このときがボクたちの、いや、ボクのピークだった。
これから味わう苦悩や挫折なんて、この瞬間からは微塵も感じ取ることは出来なかった。



この続きは、また後日。
今朝、別れた彼女の夢を見た。

いつものようにデートする夢。

いつも見せてた、愛情いっぱいの彼女の笑顔。
最後に見せた、疲れ切った表情とは正反対の顔。

目が覚めると押し寄せる現実。彼女はもういない。

付き合ってる頃ならば「一緒の夢を見たよ」と言えば「私も見たかった!」と言っただろう。

別れてから約2週間。
まだ、こんな夢をみるのかと愕然とする。

秘密日記

2005年4月8日 恋愛
昨日あったこと。

誰にもいえないので、以下ヒミツ。